芦原すなお『松ヶ枝町サーガ』文春文庫

ネタバレ一応注意。
1958-60年、四国の田舎町の少年たちの生活を描く連作。
はいはい、完全に言わずもがな安定の手腕で、愛らしさ、おかしみ、ディテールのこまやかさ、非常に豊かな物語性を感じさせてくれる、家族/地域共同体小説です。愛おしいキャラクタがいっぱいだけど、特に父親のキャラクタは出色、《いろいろバカみたいなもの》の羅列に腹抱えて笑いました。素晴らしかった。
そして当時のリアルな風物をふんだんに取り入れていながら、それが懐古の厭らしさをまったく出していないところが、何より手腕の発揮された部分だと思う。解説の人(誰?)がまったくの蛇足でそれを付加してしまっていて残念…自覚してるから許されるってもんじゃねーぞ。
あと表紙絵が、キャラクタの個性を十全に表現していて、とてもいいです。
評価はB。

松ケ枝町サーガ (文春文庫)

松ケ枝町サーガ (文春文庫)