又吉直樹『火花』文藝春秋

ネタバレ一応注意。
漫才師の主人公と、先輩の「天才芸人」との交流交情を描く芥川賞受賞作。
説明不要の話題作ですが、読んだ感想としては「しごく真っ当な青春小説」でした。お笑いファンとしてはかなり前…線香花火の頃かピース結成初期か…から気になってたヒトで、ブログにコメントしたりしてた記憶*1があるけど、そうして窺い知る限りにおいての人柄、真摯でおくゆかしい、好感のもてる人格が、そのまま作品に出てると思います。
そんな批評はあまり褒め言葉にならないかもしれないけど、変にトガって、先鋭を気取るような「純文学」より全然いいと思う。芸人の世界を描いた小説としては「説得力」という武器もあって最良のそれだと思うし、解散ライヴのシーンはまっすぐ胸を打つ名シーンです。それで止めとけば芸人お仕事小説の佳品だったけど、あのラディカルなオチをつけちゃうあたりが文学としてのエッジなのだろうと。
一方でいかにも「純文学」的な描写や、披瀝される哲学の部分にはあまり惹かれるところがなかったけど、繰り返しになるけど作者の人柄が出た、ちょっと飛んでるけどあたたかみのある人物造形と、彼らの「やさしさ」の機微に心が温まる、個人的には青春小説の佳品でした。
評価はB−。

火花

火花

*1:相方にはダイノジのライヴでサインもらった。流れで。