『マイ・バック・ページ』

DVD。
山下敦弘監督による、川本三郎自叙伝の映画化。
新左翼とその時代について調べている一過程として拝見。主要なモチーフとなっている「赤衛軍事件」(作中では「赤邦軍」)はその中でもかなりアレな事件で、こんな連中に殺されてしまった被害者の自衛官が本当に気の毒で仕方ない。作中ちょっと過剰に感じられる匍匐前進シーンはその無念に対するシンパシィを感じさせて印象深い。
松山ケンイチ演じるところの片桐、その自己顕示の自意識ばかりが肥大した蒙昧ぶりはかなり徹底して描かれている。ファルス的ですらあり、団塊のノスタルジィ的な感傷があまり感じられない点はよかった。山本義隆や滝田修といった、「大物」(をモデルにした人物)を出さざるを得なかったのはそのあたりに対するマーケティングがあったのかもしれないが…後者はともかく前者は物語的にほとんど影響を及ぼさない。
コトの大小はあれ、片桐の造形に似た「蒙昧さ」ってのは、新左翼に関して調べれば調べるほどその大勢を支配していたように思われる病理なのだけど、そうして片づけてしまうことが憚られる程度には思い入れもあるつもりで。タモツとの再会で沢田が号泣するに至るシーンは、そうした様々にシニカルな視点を包み込むような力があった。倉田眞子というキャラクタに、もっと全面的にその役割を担ってほしかったようにも思ったけれど。妻夫木の泣きの芝居は、その巧拙ではなく全体の雰囲気としてよかった。サルの頃からは格段の進歩、あんま老けないよね彼。
人気俳優ダブル主演という先入観で、ハナから参考資料的な見方をしてしまったのは申し訳なかったけれど、ザラついたフィルムの質感や美術において、その雰囲気を体感できたことはよかったです。しかしマツケン目当てで観た女子たちの感想が知りたいですねw

マイ・バック・ページ [DVD]

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