『ユージュアル・サスペクツ』

DVD。
ニューヨークの悪い人たちがロスでドンパチやるクライム・サスペンス。ネタバレ注意、です。
凄いドンデン返しのある作品だと聞いてて、その意味で期待も警戒もしながら観ていたのだけど、なんだか消化不良の内容だった。
演出としては面白いと思う。ヴァーバルが刑事部屋で目に留まったものを並べ立ててのホラ話だったって演出はなかなかに小粋。でも冷静になって考えてみたら、事件は変わらず起きてるわけだし、結局モノローグの付与されたシーンの固有名詞がテキトーだったってだけならなんもダイナミズムなくね? 自分の顔知ってる奴殺すって目的と、取った手段のリスクが合致してないし、そもそももう一人生き残っちゃった挙句に似顔絵のFAX届いてるし。「ユージュアル・サスペクツ」には過去にナメられたって話が出てくるけど、裏社会のフィクサ様があんだけの絵図描いた上に御自ら出馬してドンパチやるほどの復讐の必然性もない*1んじゃね? 船のとこでの視点関係の演出はアンフェアだと思うし…俺絶対女弁護士がカイザー・ソゼだと思ってたわ。
…などなど、数えだしたらキリがないほどにアラが感じられて、アカデミー脚本賞はいかがなものかと思ったり。まあでも、ケヴィン・スペイシーはもともと好きな役者だし役にバッチリハマっててよかった。ベニチオ・デル・トロは出番少なくて残念。
まあなんだろ、こういうサプライジングなサスペンスを撮ろうってスピリットには好感が持てるし、尺も短くてストイックだし(一方で若干チープだけど)、俳優陣も充実してるしで、B級サスペンスとしては充分な佳品と言えるのではないでしょうか(偉そう)。

ユージュアル・サスペクツ [DVD]

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*1:そうした矛盾や過剰含めて、カイザー・ソゼのキレた部分だってんなら、ちょっと人物造形面での演出が物足りない。せっかくのケヴィン・スペイシーなのに。