eastern youth 『ボトムオブザワールド』

13th。
快作。「別れ」の刻印されたアルバムでありながら、この明るさとエネルギィはどうしたことなのか。
メロディ放棄した速射砲の語りから絶唱が炸裂する「街の底」はすでにして日本エモコアのクラシック、《雲を割って光の束が降ってくる》という情景描写がそのまま音として鳴っているような「ナニクソ節」の叙景性、言うまでもなく「直に掴み取れ」の祝祭的な昂揚感はこれまでありそうでなかったイースタンの新機軸。
そうした陽性のエモーションの一方に、「テレビ塔」の轟音の中に凛とした哀惜の抒情の美しさや、かつては割れ響く耳鳴りや燃える静寂と名付けられた世界との違和や不和を、「万雷の拍手」として音に歌に十全に表現したラストの余韻があって。
様々な感情と、それを昇華した音と歌。イースタンユースエモーショナル・ハードコアは未だ爆発力と切れ味を保っていて、だから23年目の別れもきっと、新たな昇華をもたらしてくれると、あまりにも大きな欠落感の一方で期待してはいるのだけど。

どこへゆく あてもなく
思い出さずにそのまま歩く
去りゆくものに別れも告げず
いつの日も 一度きりなら
(「直に掴み取れ」)

ライヴのレヴューでも書いたけど、ニノさんお疲れ、ありがとう。

ボトムオブザワールド

ボトムオブザワールド