倉阪鬼一郎『泪坂』光文社文庫

ネタバレ注意。
下町を舞台にした人情噺にサプライズを仕込んだ長編…ジャンル分けが既にネタバレだがジェントル・ホラーか。
かなり早い段階で仕掛けは分かってしまうので、テクニック的な意味での評価はできない。でもこの作家の場合、そうした分かりやすさ、伏線の露骨さをすべて読者に対する「悪意」としてやってる可能性がある。レストランでの伏線なんてワザとやってるとしか思えない露骨さだし、不必要なグルメ描写も「ダメミス」としての常道をワザと踏んでいってるんじゃないかって疑ってしまう。
「カラオケの選曲がすべて不吉」って、伏線にもなってないようなブラックなネタも面白いし、そうやって穿った見方をしてしまうぐらいに、「得体の知れなさ」を評価している作家ではあるのでした。
評価はC。

泪坂 (光文社文庫)

泪坂 (光文社文庫)