syrup16g 『HURT』

9th。
待ちに待った、というような惹句で飾るのもなんか違うシロップの再始動。変にアゲアゲにしちゃったら、五十嵐またヘソ曲げて隠遁しちゃうかもしれないし、ひっそりと喜びを噛みしめています。今回のインタヴューとかで表に出てきた犬が吠えるの活動休止の真相、なんかあまりにもらしくて笑ってしまったんだけど。
六年半ぶりのシロップ音源、全体的には手札の再確認、という感じで、世界観的に煮詰まってくるのはまだまだこれからに期待、という感じではあります。しかし日常の鬱屈を抉り出す言葉の切れ味と、ギターロックのストイシズムの中に描く音像の彩りという、シロップのロックの根幹は何も変わらず。

Stop brain
思考停止が唯一の希望
(「Stop brain」)

はっきり断言する 人生楽しくない
だから一瞬だって 繋がっていたいんだ
(「ゆびきりをしたのは」)

もう引用したい名コピーばっかりで、この辺はさすが五十嵐って感じだなあ。特に「ゆびきりをしたのは」と「生きているよりマシさ」のアッパー二曲は詞曲充実、問答無用でかっこいい。特に後者の詞は全文引用したいレベルで何度聴いても目が潤む。

もう君と話すには 俺はショボすぎて
簡単な言い訳も 思いつかないんだ
戸惑いの奥にある 強い不信感を
はね除ける 力が残ってたらいいのに
(「生きているよりマシさ」)

ラストアルバムになるはずだった前作の穏やかさと、このアルバムのヒリつきはまた好対照だけど、六年半を経てまたこうロックバンド然とした作品を引っ提げてきてくれたのはやっぱりテンション上がります。ラスト「旅立ちの歌」は正直めっちゃダサいけど、そういうかっこつかなさもまたこのバンドらしくて愛せるところ。
さすが俺の青春のロック・ヒーローの一人、五十嵐隆はラジオ聴きながら家事をしているだけの男ではなかったということですね。
おかえりなさい。

一生そればっかりでも 飽きるから
本気出せるもん ひとつくらいはないか
(「ゆびきりをしたのは」)

Hurt

Hurt