『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』

DVD。
盲目の退役軍人と、アルバイトで彼の世話をすることになった高校生の交流を描くヒューマン・ドラマ。スレード中佐を演じたアル・パチーノ、キャリア唯一のアカデミー主演男優賞。
「哀しみと切なさを根底に称えた微笑ましさ」という、優れたヒューマン・ドラマの資質を備えた作品です。豪放な毒舌家であるスレード中佐を、迫力と哀感を兼備して表現するアル・パチーノの力演も文句なし。
ただ正直、お話としては単純に過ぎるかなあと思ったし、ところどころ脚本・演出もっと頑張れよ…と思うところはありました。中佐がチャーリーに銃をつきつけるところ、あるいはクライマックスの「裁判」。葛藤や苦悩が充分に昇華しきれたようには思えなかった。文学的なタイトルの割にかなり牧歌的な作品で、確かに作品賞なんかはキツいかも、と思ってしまうのでした。個人的には先に『最強のふたり』なんかも観てしまっているし…。
でもこの作品が映画史上に名を残す、中盤でのタンゴ・シーンは最高に素敵でした。ガブリエル・アンウォーの美しさ、この作品のこのシーンがキャリアのピークって刹那性もあいまって感動的です。あとは若い時からやはり必要以上に存在感たっぷりのフィリップ・シーモア・ホフマン(主人公の級友のクズ)。追悼上映祭をしようと思ってたんだった。『ザ・マスター』とか観ないと。