矢作俊彦『夏のエンジン』文春文庫

ネタバレ注意。
クルマをモチーフにした青春小説短編集。
青春小説という単語では、このオトナな味わいをまったく表現できないけれど。統一的な美意識と小説技巧の安定感が感じ取れる、こんなんならいくらでも書けるぜ、って感じの作品集。やはりちょっといけすかないところはあるけど、トータルレベルの高さはさすがかと。
《それはしかし、何故か不快なものばかりではなかった。》(「白昼のジャンク」、34p)、《しかしその代わり、自分が自動車より、そしてアメリカより素晴らしいものを手に入れていたのだと気づくには、まだまだ彼は子供すぎた。》(「ボーイ・ミーツ・ガール」、151p)と、ラストのセンテンスに光る部分が多く、そのあたりは好みだった。
ベストは「冬のモータープール」がなかなかにせつない恋愛小説だったけど、これのラストはちょっとベタ。
評価はC+。

夏のエンジン (文春文庫)

夏のエンジン (文春文庫)