amazarashi 『ワンルーム叙事詩』

2ndEP。
このEPからは三曲。
2.「クリスマス」

罪深い十二月の朝に 白い雪の粒が舞い落ちて
それに優しさが埋もれたなら こんなに眩しいわけはないよ

いまだにamazarashiを聴きまくっていますが、この曲は中でも一番好きな曲です。
戦時下にある「遠い街の少女」と、都会に鬱屈を燻らせるおそらくはかつての自分自身、ファンタジィとリアルを重ねて描かれる、クリスマスの風景。
いろいろと語るべきところの多い楽曲なんだけど、俺はこの曲に関しては一点突破で撃ち抜かれるところがあって。聖夜に尾を引くミサイルの光跡を《流星と見間違えた》少女が、それに願いをかけるという哀しいアイロニィを、繰り返されるその「三つめ」で反転させてしまう、その鮮烈で美しい情景。そしてまた、意図されたことであるのか穿ちすぎなのか、それもまたファンタジィへの再回帰であるという寂寥に、何度聴いても涙腺が決壊します。「ナモナキヒト」とか「パーフェクトライフ」で刺激される涙腺とはまったく異なる、感動という以外に言葉のない涙です。
《汚れた僕が汚した世界》《見てみろよ 酷い世界だろ》なんて中二フレーズが虚妄に映らない、作家性の結実。

5.「ワンルーム叙事詩

雨にも負けて 風にも負けて 雪にも夏の暑さにも負けて
それでも 人生って奴には 負けるわけにはいかない

表題曲だけに、力の入って充実した詞曲です。ここ引用するのはベタだと思ったけどやっぱり一番力のあるフレーズ。
「クリスマス」の主人公のその後か知らんけど、都会のワンルームに叶わない夢と鬱屈を溜め込み、ついには部屋に火をつけるお話。どこかユーモラスでもあるけれど、アレンジと歌唱はあくまで美しくエモーショナル、その相乗はamazarashi屈指。
いらん話だけど最近のワタクシのカラオケ十八番となっております。《僕は 僕は 必死に叫んだ》からのフレーズに最大限の感情を込めるのが最大のポイントで、そうすると《焼け野原》のカタルシスもハンパない。
これに限らず、営業車中では号泣しながらamazarashi歌うのがデフォルトです。

7.「真っ白な世界」

決して終わらないと 思ってた事が
気付いたら終わって いたりするからさ
持て余した情熱も 傍にあった笑顔も
もっと大切に しなきゃいけなかった

喪失の痛みを雪景色に染めて。
詞曲共になんだかおとなしく、クセの少ないフォーク調のバラードです。amazarashiにしては「面白み」のない曲で、LIVEの時の映像演出もなんかすごくダサかった記憶があるのですが、でもなんかな、iPodの同期外せないのは、この曲がどことなく自分にフィットするものを感じるからなんでしょうね。
東北出身者としては、この曲に描かれる風景を原初体験として持っているからだと勝手に共感を抱いてみたくもなるのですが。深々とした無音を聞きながら眠り、やがて雪明りで目覚めて迎える「真っ白な世界」。そうして根を下ろした心象ってのが、確かにあると思う。

ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩