amazarashi 『0.6』

インディーズEP。
現在流通している中では最初期盤。
既にamazarashi的な世界観は確立されていて。身も蓋もないネガティヴィティと、それを振り払う闇雲な意思と祈り。象徴的なのは「少年少女」、思い出と感傷に縋りながら、でもそれを振り棄てようという必死な足掻き。

夜の街を彷徨いながら 昔話に夢中になってた
そんな事もあったねと 彼女は笑いながら泣いた
それでも それでも 頑張れなんて言えなかった
さよなら さよなら せめて笑いながら手を振った
(「少年少女」)

豪奢で美しいアレンジとエモーショナルなヴォーカルとの一体感も、既にして完成されています。
そしてそれがあるからこそ成立する、というスケール感でもうひとつのハイライトを作るのが、前回のライヴでも印象的だった「つじつま合わせに生まれた僕等」…人間の営為の歴史と、現代社会の病巣(…なんて書くとバカみたいだな)をクロスさせて描く、壮大で感動的なバラード。

誰もが転がる石なのに 皆が特別だと思うから
選ばれなかった少年は ナイフを握り締めて立ってた
匿名を決め込む駅前の 雑踏が真っ赤に染まったのは
夕焼け空が綺麗だから つじつま合わせに生まれた僕等
(「つじつま合わせに生まれた僕等」)

正直に言えばそんなに目新しいアプローチではないけど、特に前半は非常に完成度の高い詩作で言葉のセンスの鋭敏さを感じさせます。だけど最後の提示は、やはり同じアプローチを採ったBLANKY JET CITYのクラシックと比べると、一段も二段も落ちてしまうかなあという印象がありました。
「悪いひとたち」におけるラストのフレーズは個人的に日本の音楽史上至上のキラーフレーズであるので、それに並ぶ感性と完成をこの段階で求めるのは酷だけど、今後のamazarashiに期待するのは言葉の雨霰の中にキラリと剃刀のような、そんな切れ味。…つかこの後の「クリスマス」にも「古いSF映画」にも、俺はそれを見出しつつあるんだけど。
まあいい曲やけどな、「つじつま合わせ」。音盤としても、完成と萌芽を同時に味わえる、意義の深い作品ではないでしょうか。意義のまったく分からない「光、再考」のDJ KRUSH remixも、その過程での迷走でしょうかw

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