amazarashi 『ねえママ あなたの言うとおり』

4thEP。

「彼女に振られたんですよ」と心療内科の先生に
相談したら 自業自得だと説教されて帰された
二度と来るかこのヤブ医者 悪いのは百も承知だ
って開き直れる程強くない さながら自己嫌悪の吹きだまり
(「風に流離い」)

って、聴く方の心持ちしだいではこの上なくキャッチーな自虐ネタから幕を開ける本作。
ネガティヴィティの中に生き長らえようと懸命な意思をエモーショナルに歌い上げる「風に流離い」、それをより衒いのない青少年賛歌へと昇華させたアンセムジュブナイル」、スケール感と切迫感、そしてラストの美しい余韻を併せ持つ点で現代日本版「わるいひとたち」とでも言ってしまいたくなるバラード「性善説*1、クリティカルな詞をまくしたてるアグレッシブなロック・ナンバー「ミサイル」。フルアルバムにも劣らない充実の陣容。
しかしこの作品において、個人的に*2断トツに感情を動かされるのは、ライヴレポでもちょっと触れたけど、ラストに置かれたバラード「パーフェクトライフ」であって。

悩みはどうせ消えない 振り回されてばかりの世界の中で
溺れそうに もがきながら それでも悪くないなって思えるものが
どれだけあったら失敗じゃない? 僕らの人生は
完璧な人になりそこねたよ 何もねぇ人生

何回聴いても嗚咽が漏れるレベルで泣けるんだけど、それを若干情けないんじゃないかと思いつつ、でもこの祈りに似たことばと歌の、その闇雲さと容赦のなさが、自分にシンクロして、核心を突いて、揺さぶられてしょうがない。

出会いと別れにただ泣き笑い それだけの人生か
でも
それだけあったら失敗じゃない 僕らの人生は
完璧な人にはなれないけれど 完璧な人生
(「パーフェクトライフ」)

三十路を迎えてこれはヤバいよ。最高級にエモ。
また違った感情の下にこの曲を聴けるようになることを、自分に期待したいのも確かですが、それはまあ、こんなとこに書くのでもない話。

ねえママ あなたの言うとおり

ねえママ あなたの言うとおり

*1:現代社会批判における「満員電車」という手垢のつきまくった陳腐な題材においても、《僕は僕を保つので精一杯で》の後に《その実誰かの肩にもたれていたよ》と唄える自己認識の在り方が、俺がこのアーティストを信頼できる理由だなあと思う。

*2:リスナの年代によって、ツボに感じる曲がそれぞれだと思うんだよな。その階層的な多様性もなかなか凄いと思う。ライヴも客層若かったし。