森谷明子『千年の黙 異本源氏物語』創元推理文庫

ネタバレ注意。
平安時代の宮中とその周辺を舞台に、『源氏物語』の成立とそれにまつわるある「謎」を描いた連作中編、第13回鮎川哲也賞受賞作。
まず、普段あまり読まない時代と題材が採られていて、その点で目新しさはあったし、またそれらが濃やかに描かれているとも思うのだけど、個人的には描写の質*1が合わず、臨場感や迫真性を感じることができなかった。「消えた猫」に関する「歴史風俗版日常の謎」プロットとか、中心的な謎となる「かかやく日の宮」に関する歴史・文学史的仮説提出に関しても、そのせいかあまりテンションの上がらないままだった。
一部、岩丸というキャラクタに関するあるサプライズはうまく盲点衝かれた感じがあって、それは舞台・時代設定とも見合っていて、俺的に一番評価できるポイントはそんなどっちかっつーと隅っこにおかれたものだった。
評価はC。

千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

*1:一番シンドかったのは、同じ人物に複数の呼び名があることだな…。