ネタバレ一応注意。
「孤島の鬼」と「猟奇の果」の二長編。
「孤島の鬼」に関しては、やはりリーダビリティの面で乱歩の最高作に挙げるに異論はない。インモラルな奇想を中心に、暗号から恋愛から活劇からいろいろと仕込まれていて、さらにその展開がスムーズで、エンタテインメントとしての完成度は図抜けているように思う。
でも俺にとって、この作品のどこかしら狂騒的な雰囲気が乱歩に求めるものとは違っていて。やはり「陰獣」に軍配が上がってしまうな。でもこのレベルの作品においてさえ、《結局あんなものしか出来なかった。》(自作解説、333p)なんて自虐は至芸でもあるが、どんだけハードル高いねん、というツッコミは、この巨匠の理想の探偵小説像と自作の乖離、その歯痒さを思わされてせつなくもある。
「猟奇の果」みたく、どう見てもグダグダなら分かるけどなw
評価はB−。
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/08/08
- メディア: 文庫
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