永井するみ『ミレニアム』双葉文庫

ネタバレ注意。
今では遥か遠い記憶の2000年問題ですが、往時のシステム会社の内幕としても、もちろんサスペンス・ミステリとしても、愉しく読める佳作です。いつも自身の多彩な経験をネジ込んでくる永井するみ、ピアノもやって農学もやって、実はSEもやってたのね。でも何書いてものこの平均点の高さは、単に小説家としての腕の証左でしょう。
恋愛要素に関してはこの人の小説なら他にもっといいのがあると思うし、プロットは若干単純…と言うか黒幕の企業および実行犯のリスクとプロフィットがまったく見合っていないように思えるし、久武さんの「気付き」の端緒とかツメの甘い部分も見受けられるように思うけど、それを補ってテンポがいいし、SEを中心とするひとびとの生態が面白い。
何度も言うけど、必ず一定の水準は達成するエンタテインメント・ミステリの職人、永井するみのワザに安心して浸っていられました。持ってる本はこれが最後です。合掌。
評価はB。

ミレニアム (双葉文庫)

ミレニアム (双葉文庫)