望月諒子『殺人者』集英社文庫

ネタバレ注意。
二作目で、文章は若干マシになったかな、一作目よりは読めるような気がしました。
でも結局、同じことに収斂してしまうのだけど、根本的な部分で「書きすぎ」、この人。
話の骨格だけ取り出したら、なんてことのない復讐譚なのに、余計な描写・展開・挿話が多すぎる。こんな着膨れして肥大化した果てに、荘厳めかした犯人との対話聞かされたって、凄みなんて到底感じられませんが。

 処女性は、後生大事に守っていても仕方のないものではあるが、かといって男性の幼稚な下半身神話にのせられて、あたかも自分自身が望んでいることのように錯覚し、性体験の多さを女性としての自信にすり替えて、その間違いに気付かぬ女性たちのいかに多い昨今であることか。
(246p)

とかって、フェミニズムもうっすいよー。これ展開的にフェミニズムは目くらましのハズなんだけど、なんかアヤシくなるよねこういうの読まされると。マジで書いてんじゃねーかっていう。
あるいは「報道倫理」的な側面においても、主人公の加害者遺族に対する取り入り方とか、唐突を極めて到底掘り下げられているとは思えない。
クドいのに浅い。嫌いなタイプの筆質です。
評価はC。

殺人者 (集英社文庫)

殺人者 (集英社文庫)