ネタバレ一応注意。
遺稿集、という形の本。連作になるはずだった二本の短編と、長編のプロット原稿で構成。
前者、短編の方はセクシャルな要素を中心としたサイコ・サスペンス。目立った美点、特長は感じられず、水準作の域を出ていない。ただ語りのシチュエーションが特殊で、それが連作通しての仕掛け、サプライズにどう関わってくるのか、二本の短編だけからは窺い知れない設計に評価は左右されるだろう…だけどそれは、もはや詮無いこと。
長編「群生」のプロット原稿、こちらは確かに骨太で、その骨格と薄い肉付けからだけでも、作者が目指した「読み応え」が伝わってくる。前半と後半で物語のステージと志向性が変わってくるが、その移行をどれだけ説得力と迫真性をもって描けるかがキモだろう…だけどそれも、もはや詮無いこと。
評価はC+。
- 作者: 野沢尚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/15
- メディア: 文庫
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