チャットモンチー 『告白』

3rdアルバム。
今年のベスト・ロックアルバムの最有力候補。その名を日本ロック史上に刻む、燦然たる金字塔。言うまでもなく、最高傑作です。
前作『生命力』の、キラキラして眩しいポップネスはむしろ後退している。サウンドのアイデアは多彩だが、なにより印象深いのは骨太なバンドアンサンブルと、躍動的な楽曲のダイナミズムだ。端的に、ただ優れたロック・アルバムである。
全曲感想行ってみよう。
1. 8cmのピンヒール

消せないメールの行方
冷めにくい熱だった
太陽が迎えにきても
覚めにくい夜だった

なんて入りの詞だけ聴いて絶対あっこ詞だと思ってたらクミコン詞だった。どうしたどうした、最近綺麗だぞ。
まったく無駄のない、流麗なメロディとギターの響きが印象的な名曲。サビの伸びやかさが快感。
「東京ハチミツオーケストラ」といい「親知らず」といい、彼女たちのアルバムの一曲目はその後もキーとなり続ける名曲揃いだが、この曲も新たな「ガールズ・アンセム」として、その系列に加わるだろう。
2. ヒラヒラヒラク秘密ノ扉 (Album Mix)
詳しくはシングル・レビューにて。
横溢するハイテンションとカラフルな詞曲で、隙のないロック・アンセムぶりを発揮。問答無用の大名曲。
コーラスワークもちょっと違うね。シングル版はあれはあれで好き。
3. 海から出た魚
あっこ詞かっこよすぎ。

わたしは海から出た魚
気持ちいいのはもう飽きた
無いものねだりで終わらない
落ちた鱗は あなたにあげる

ジリジリと高揚感を煽る展開。こういうミディアムチューンを演らせると本当にいい。サビの音像、そっからの繋ぎのギター、ホールにこれが響き渡るのを想像するだけで達してしまうぜ。
こっから「染まるよ」を経て「CAT WALK」まで、亀田誠治は神の仕事。
4. 染まるよ
シングルの時に絶賛しました。詳しくはそちらを見てね。
シングルとアレンジ同一。何一つ足し引きすることのできない、完璧な出来です。
5. CAT WALK
いかにもクミコンらしい、こまやかな描写と清新な決意の宿った「強い」詞が、これ以上なく美しいメロディとドラマティックなサウンドに乗っています。
ここの三曲、大得意のミディアムチューンがシンプルにしてダイナミックなギターサウンドに乗った名曲連発。少しは出し惜しめ。
「染まるよ」を別格とすれば、このアルバムのベスト曲です。
これもサビの繋ぎのギターがホ(以下略)
6. 余談
ちょっと一息、といった感じだが、相変わらずえっちゃん詞はファニーながらどっかしら棘があって面白いし、転調も鮮やかな佳曲。
7. ハイビスカスは冬に咲く
さあ、ここで変態曲だw
なにこの鬼のような変拍子! ライヴでどうやってノるねん。ハワイアン調のキュートな曲なのだけど、実際鬼です。
8. あいまいな感情
「Last Love Letter」とこの曲はセルフプロデュース。
コーラスワークを多用したドリーミーなミディアムチューン、というのは「three sheep」もそうだったし、セルフでのキャラかもしれませんね。
ドリーミーと形容するには低音効きすぎだがw
9. 長い目で見て
三人交互にボーカル。チャットのアルバムは大抵コミカル担当曲みたいなのがあるんだけど、これと次がそうか。
えっちゃんのパートになるとすげー安堵感w これもサビの転調が鮮やかです。
10. LOVE is SOUP
もう生き生きと、なんの迷いもなく書いているのが伝わってくる、恋愛アレゴリー詞は言うまでもなくあっこ十八番。えっちゃんのキュート極まるボーカルが聴きどころの一です。
これ、客席歌わすかなあ。
11. 風吹けば恋
詳しくはシングル参照
ほっこりした前曲からの流れで、オルタナ感満載のイントロ→サビ前の展開がなお一層映えています。
12. Last Love Letter (Album Ver.)
詳しくはシングル参照
しかしこうして見ても、あっこ詞は頭一つ抜けてるなあ。今日本の作詞家の中でも最良の一人だと思うぜ、マジで。
13. やさしさ
ラスト。この曲はちょっと凄え。

明日ダメでも 明後日ダメダメでも
私を許して
それがやさしさでしょう?

こんなミもフタもない詞を、浮遊感のあるメロから、徐々にエモーショナルにリフレインして高まるサビへと、鋭利なギターと共に叩きつける、得体のしれないパワーとスケールを持った楽曲。ここで出た、えっちゃん曲だ!
他の二人の作品がどんどん充実していく中、コンポーザとしての役割に邁進しているように見えた彼女が、(俺的には)久々に放った衝撃のロック。
ミもフタもない、というのは彼女の作品の大きな特徴で、たとえば「恋愛スピリッツ」に顕著だが、なぜそれがこんなに大いなる包容力を持った音楽として聞こえてしまうのが不思議でならない。三人のメンバーそれぞれがバンドの楽曲にさまざまな色を加えていて、えっちゃんが担っているそれはこのような「神秘性」なのだなあ、と感じ入った次第。

さて。

しかし、『告白』とはまたあまりにも内実に見合ったタイトルを冠したものですね。
ただ真っ直ぐに、持てる全てをそのまま表現した、夾雑のない純粋な音楽。
これがチャットモンチーであり、これこそがロックだ。

告白

告白