大沢在昌『氷舞 新宿鮫6』光文社文庫

ネタバレ注意。
今まで読んだこのシリーズの中では一番面白かった。
公安をめぐる権謀術数は謎めいた展開を見せながら、解き明かされてみればシンプルで落ち着きのいいプロット。その中で、ヒロイン=犯人の造形も魅力的に立ち上がってくる。復讐の凶手であり、前衛舞台芸術家でもある孤独なヒロインの造形は抜群で、やや性急の感もある鮫島とのロマンスも、ロマンティックなものとして読まされてしまう。
ラストで「殺さなかった」ことにより絶望的な陳腐には一歩踏みとどまっているが、「男のロマンス小説」というこの作家の「ハードボイルド」の本質は端的に顕れているかな、と思います。ラストでの晶の都合のよさには憐みをおぼえました。
評価はB。

氷舞―新宿鮫〈6〉 (光文社文庫)

氷舞―新宿鮫〈6〉 (光文社文庫)