eastern youth "極東最前線/巡業 〜スットコドッコイ20年〜"

2008.10.4@名古屋クラブクアトロ
今まで観たイースタンのベストアクト。笑い泣きしました。
形式としてはベストアルバムのレコ発になるのかしら。土曜日のクアトロは大入りで、ベスト・セットリストに歴戦のリスナたちは大盛り上がりだった。吉野さんも「名古屋ってこんなに盛り上がるっけ? いつもシーンとしてるイメージなんだけど」的なことを嬉しそうに語りつつ、演奏とMCにいつも以上の気合が乗るのが分かった。
「ロックスターになんかなりたくねえんだ。スットコドッコイでいてえよなあ」と不敵に笑って掻き鳴らされたギターのイントロ、同時に湧き上がる絶叫とモッシュの渦…「踵鳴る」のもはや信仰にも似た盛り上がり。「こうやって生きることを決めた時に書いた曲」と珍しく、バンドヒストリーを語って鳴らしたアンコール、「裸足で行かざるを得ない」、突き上がる拳と≪孤立無援の花、咲くばかり≫の大合唱。
「ロックスターになろうと思って始めたわけじゃない。ただそれが必要だっただけなんだ。あなたたちにそれが必要なのと同じように」。熱量の多いMCに大いに震え、原初体験であるこのロックの熱はおそらく、俺の一生の傍らにあるのだろうと思った。

そぼ降る雨に濡れ帰り道
『過ぎ去りし夢だよ』と気取るなよ
その命、燃ゆるなら何時の日も
声高く歌はある
誰にでも
(「裸足で行かざるを得ない」)

自分の存在の卑小を自覚しながら、それでも顔を上げて前に進むという意志。それは毅然というよりむしろ、破れかぶれの傲岸。その無様な美しさが剥き出しになるのがこの場所だから、彼らのライヴはいつだってこんなにも胸を打つ。無頼の詩情で自らを慰撫するようでは、彼らのロックを聴く資格がない。傲然たる意思と共にあるべき音楽なのだと、俺は自戒を背負って拳を挙げた。

「明日はきっと晴れる。俺には判る。」
(「DON QUIJOTE」)

二度目のアンコールに「ワタシヲ殺ス気デスカ」と言って現れ、いつもの絶叫カウントで鳴らされた「DON QUIJOTE」は、そんな彼らのロックの本質を何より表していた。こんな無根拠な肯定性に、絶対的な説得力を付与できるのは、その意思の正しさがバンドとリスナに共有されているからに他ならない。
秋の始まりのクアトロに、圧倒的な熱量。熱い夜でした。
セットリスト:1.夜明けの歌 2.沸点36℃ 3.世界は割れ響く耳鳴りのようだ 4.泥濘に住む男 5.雨曝しなら濡れるがいいさ 6.野良犬、走る 7.秋風と野郎達 8.街はふるさと 9.踵鳴る 10.矯正視力〇.六 11.東京 12.荒野に針路を取れ 13.夏の日の午後 14.素晴らしい世界 en.1 裸足で行かざるを得ない en.2 DON QUIJOTE