V.A. 『極東最前線2』

イースタンユース主催イベント、「極東最前線」の参加バンドによるコンピレーション。

極東最前線

極東最前線

↑2000年の一枚目は、イースタンにハマりはじめたロック初心者だった高校生を、和製エモ・ハードコアの肥沃野に誘ってくれた思い出の一枚。NAHTハスキン怒髪天MOGA THE ¥5ナンバーガールにブッチャーズ…今聴き返しても名盤すぎるし、その後の俺の音楽嗜好の形成に果たした影響は計り知れない。めちゃくちゃ回した、このアルバム。
そして、その後も様々なアーティストとのアツい摩擦で牙を研ぎ続けた、八年の集大成がこのたっぷり二枚組のアルバム。和製エモ・ハードコアオールスターの感のあった一枚目とは異なり、*1多種多彩なアーティストの、多種多彩な音楽的実験と達成を聴くことができる。
エモ、という言葉がいいか悪いか別として、その枠に括れるのはイースタンと、かろうじてバックホーンがいるぐらいだろうか。インスト・ポストロック、ノイズ、女性シンガーソングライター、洋エモ。カテゴライズができそうなアーティストだけ取り上げてもこんな感じだが、たとえば実際極東で観た名古屋バンドTEASIとか、あるいはM.A.G.O.なんかは、ジャンルをどう呼べばいいのか想像もつかない。イベント自体の拡がりと貪欲が確認できる新鮮なメンツである。
なのでどうしても散漫になるが、気になったバンドをいくつか列挙。
まずtoe。「ラストナイト」という楽曲は、持ってる音源の楽曲より明暗の対比が鮮烈でとても気に入った。挿入される吉野の台詞、特に《夕べに出会おう》という一節はハマりすぎて身震いした。フジロックの映像なんか観てても、声の使い方も巧いバンドなんだよなー。
disc1ではあと枡本航太。寡聞にしてまったく知らなかったシンガーソングライターだったが、この過度にブルージーなボーカリゼーションはクセになる。受け付けない人も多いだろうけど…。
あとはdisc2の掉尾を飾るenvy。アホみたいだけどもう、なんつーか、深遠だ…。
そして、アルバム通して自分に一番鮮烈だったのは、三人いる女性シンガーソングライターの作品だったな。二階堂和美のレトロキュートな世界観、タテタカコの凛とした高音と美しい風景描写。そしてなにより小谷美紗子。情念を唄ったアルバムを聴いてトゥーマッチだと敬遠していた自分を深く反省した。「東京」という楽曲に閉じ込められた心象風景、そこに丁寧に感情を織り込んでいくボーカルの表現力はちょっとレベルが違う。特にサビのカタルシス、字義本来の「浄化作用」は圧倒的だ。この一曲聴くためにアルバム買ってもいいな。
うん、そしてイースタンの方の「東京」は、ライヴで聴いた通りのいい前のめり感のある曲だが、この並びではやや食われる…こういうとこは前作と一緒かも。「曇天と面影」もすごく好きだけどね。
極東最前線2

極東最前線2

*1:共通して収録されているのはfOULと、現在ZAZENの向井ぐらい。両者とも音楽性は変化している。特にfOULがこんなに聴きやすくかっこいいのには驚いた。