《憶えてない夢のせいで心が》

今頃知ったんだけど。
服部まゆみさんが亡くなられたそうで。58才とはいかにも若いです…もったいない。
銅版画家にして本格ミステリ作家。その経歴そのままの、芸術的な感性と精緻な構成力を併せ持った稀有な本格作家でした。近作は独自の考証を交えた重厚な歴史ミステリが続いていましたが、僕は特に、耽美的な倒錯と狂気を、やわらかな文体で包み込むように描いた初期作品がとてもとても好きでしたね。『罪深き緑の夏』や『この闇と光』、そして『時のかたち』。
ふとあたたかな夢幻に迷い込むような、優しくて怖ろしい小説を書く作家でした。もっと読みたかった、と残念な気持ちは抑えようもありませんが…安らかにおやすみください。