THA BLUE HERB

2007.7.2@名古屋クラブクアトロ
昔は知ってるバンドなら見境なく、それこそ週一でライヴハウスに行ってたから、アタリもハズレもあった。だけど最近は本当に好きな、それもライヴパフォーマンスに信頼の置けるバンドをしか観に行かなくなり、結果としてそのライヴはどれも素晴らしい体験になった。[live]のカテゴリの記事は、どれもバンドを絶賛しているはずだ。
それと差別化することはできないかもしれないが、今夜の名古屋クアトロの光景を、僕は精一杯の言葉で絶賛しようと思う。

今や俺等とは 君を含めた四人だ
(「THE ALERT」)

印象的だったのは、まずオーディエンスの「拍手の長さ」だった。スタンディングのライヴハウスだ、全員が最初っから立ち上がってる。だけどそれは、紛れもなくスタンディング・オベーションだった。自分たちに突き刺さった音と言葉、それを伝える技術と真摯さに、衷心の喝采を。フロア後方から、ほぼすべてのオーディエンスが、長く長く、頭上で手を打ち鳴らすのが見えた。
真摯さ、と書いた。BOSSという人のリリックは、アートフォームとして完璧に近い。音源では時に陰鬱に聞こえるトラックも、ライヴの場におけるヒリヒリした緊迫と高揚の演出に非常に貢献していた。それらを過不足なく伝えるだけで、超一級のパフォーマンスになるはずだ。しかしBOSSは、それだけでは足りないというように、MCとインプロビゼーションを度々挟む。あれだけのカリスマ性を放ちながらも、彼の言葉の親密と真摯は、なんの障害も夾雑もなく届く。まるで隣あって肩でも組んでいるかのように。特に最新作に多い信頼と連帯のリリックは、そうした「場」によってより鋭く刺さるものになっていた。
緩い二部構成だった。後半アタマの「I FOUND THAT I LOST」「WE MUST LEARN」「TENDERLY」のあたり以外は、ビートで押すタイプの曲が多く、音源で聴く「深さ」よりは純粋な快感、高揚感に真髄のあるパフォーマンスだったと思う。そうした意味でハイライトは「THE WAY HOPE GOES」から「未来は俺等の手の中」の流れだった。圧巻は圧巻だから圧巻なのであって、あの凄みを表現する言葉を僕は他に持たない。
怒涛の二時間。「また遊ぼうぜ」と言ってBOSSはステージを去った。この夜に観た天下無双の表現者の姿、届けられた言葉と音のすべてが、日々を生きるすべてのbrothers&sisters&good music junkiesの、life storyをまた少し、確実に深め、前進させるだろう、既にクソ暑い初夏の一日、特別な一夜。
ツアーはまだ始まったばかりだが、北の地で始まった旅は南下を終え、やがて北へと帰る。既にアナウンスされた最終公演、RISING SUN ROCK FESTIVALの朝焼けの中で、再び拳を握れるだろう。
未来は俺等の手の中