RADWIMPS 『RADWIMPS4 〜おかずのごはん〜』

これだけ一枚のアルバムのリリースを心待ちにしたのはいつ以来だろう。
前作のような、音楽としての雑食性、圧倒的な広がりはそれほど感じられない。レゲエとかアコースティックナンバとか、音像としては多様なはずなんだけど。
それは明確に、アルバムを色濃く覆っている喪失感の故だろう。「恋愛教」の信仰の対象を失った野田の痛みが、このアルバムのカラーを規定している。しかしそれらの楽曲が、単なる失恋ソングになっていないのがソングライタ・野田洋次郎の面目躍如。「君」との愛は、父母や神、そして世界との繋がりを経て、人間の存在論へと収斂していく。実に感動的なアルバム。
以下全曲感想。
少し長くかかるかもな でもね 頑張ってみるよ

ふたりごと 一生に一度のワープver.
シングル曲。
ラップ部分が非常に気持ちがいい。最高傑作と云っていいライム。伸びやかに疾走するサビ部分との相性も抜群の、屈指のアンセム
以下の詞がめちゃくちゃ好きです。よく口ずさんでます。

六星占術だろうと 大殺界だろうと 俺が木星人で君が火星人だろうと
君が言い張っても
俺は地球人だよ いや、でも仮に木星人でもたかが隣の星だろ?

一生で一度のワープをここで使うよ

余談ですが、PVが凄くいい。I miss 大学生活。

②ギミギミック
攻撃的なギターから始まるロックナンバ。ファンキーなリズムに高速で乗せる生命論。「揶揄」とかに通じる曲だが、クールな印象がこの段階でアルバムのカラーとして聴ける。

③05410ー(ん)
「起こして」だろな。ずっと「Wake me up」云ってるし。
UKっぽいメロ、無邪気なラップ部分、韻のキいたサビと、ミクスチャー全開。でも一貫して、「戻ってきて俺を起こしてくれ」って云ってんの。泣けるね。

me me she
この曲はやばいと思う。ミクスチャロックで唄った喪失感を、今度はアコースティックなバラードにしちゃいました。もうなおさらです(なにが)。非常に綺麗な曲だと思うよ。でもね、詞が完全な狂気。

僕が例えば他の人と結ばれたとして
二人の間に命が宿ったとして
その中にもきっと 君の遺伝子もそっと
まぎれこんでいるだろう

…まあね。分かるよ。気も狂うよね。「女々しい」とかじゃねえけどな、もう。

有心論
ラッドの「ロック」の最高の一曲だと思う。

誰も端っこで泣かないようにと 君は地球を丸くしたんだろう?
だから君に会えないと僕は 隅っこを探して泣く 泣く
誰も命無駄にしないようにと 君は命に終わり作ったよ
だから君がいないその時は 僕は息を止め 待つ

もっとも端的に野田洋次郎の哲学が表明され、それがロックのフォルムの上で見事に展開される。ラヴソングがいつの間にか賛美歌に。
「僕の心臓は君のために脈打つ」と唄った「心臓」に、この曲で示される「この心臓に君がいる」というアンサーが、バンドヒストリーとしても意義深いものではないかと。

⑥遠恋
非常に微笑ましいダイアローグの詞が素敵。その後の展開は題材の割に乾いていて、面白いセンスだと思う。
タイトルがあまりにも直截的なので高校生ウケしそう。

セツナレンサ
大体はシングルのとこで書いたけど、目新しいと思ったこの曲のカラーは結局アルバムのカラーだったんだなあ、と。

⑧いいんですか?

今まで俺は何回お前を泣かせたんだろう
それに比べて何回笑わせてやれたんだろう
更には嬉し泣きっていう合わせ技もお前は
持ち合わせているから余計分かんなくなんだよ

レゲエとハンドクラップ。ユーモラスな詞。唄ってるのはひたすら「俺はお前のことをこんなに好きだけどこれってアリなの?」って話。
野田の穏やかなボーカルが、サビのリフレインで涙腺を決壊させる。だって、お前、別れてんのに…。

⑨指切りげんまん
お洒落なフレンチっぽい小品の趣。クッションぽいな。

⑩傘拍子
全英語詞。これは完全にお別れのバラード。英詞だと結構ストレートに切ない歌が聴けますね。
野田のボーカルは感情を抑えたように淡々と美しいメロディをなぞっていくが、サビのラストでふと「揺らぐ」。瞬間、泣く。
「君の靴紐になれたらなあ」ってのは凄い詞だ。

⑪ます。
今度はメロコアのクッション。ポジティブでキュート。

夢番地
生命論とか、存在論とか、野田の哲学はこの曲で一つの結実を見たと云えると思う。思えばメッセージとして、「夢見月に何想ふ」では小賢しく感じられたものが、この曲ではより飾りのない言葉・表現で、まっすぐに伝わってくる。
このアルバムの中で、唯一喪失感から逃れた高みにあって、そして最も感動的な曲だと思う。

⑬バグッバイ
チェロの響きが美しい壮大なバラード。ちょっと難解さのある曲だが、これぐらい才気走ってるのも良いと思います。

あとはオマケトラックだが、ずっとあのフォークでいったら泣いたけど、騒いじゃうのがこのバンドらしいのよね。
さて。言い尽くしたのでメモだけ。クリスマスはチケット取れなかったから、4月のツアーは頑張りますよ、と。

RADWIMPS4~おかずのごはん~

RADWIMPS4~おかずのごはん~